誰よりも向上心がある彼女だから、初選抜はきっと涙を流して喜ぶに違いない。そんなこちらの予想が恥ずかしくなるほど、寺田蘭世は遥か彼方を見据えていた。誰よりも向上心があるからこそ、選抜を「通過点」と言えるだけの強さがあったのだ。断言する。いま、寺田蘭世が誰よりも熱い。

満足することは死ぬまでない

――初選抜、おめでとうございます!名前を呼ばれた瞬間はいかがでしたか?

寺田 選抜は研究生時代からずっと憧れていた場所だったので、私もいつか名前を呼ばれたら、きっと泣いちゃうんだろうなって想像していたんです。でも、この数年でいろんな経験をさせてもらったことで、昔の自分よりもどっしりと構えていられたというか。思い描いていた選抜発表とは全然違いましたね。

――泣いていませんでしたよね。

寺田 泣いてもいないですし、なんなら親には、「怒ってるの?あんな鋭い顔をして」って言われました。全然満足いかないなっていう気持ちが大きかったんです。

――どういうことですか?

寺田 いつ呼ばれてもいいっていう心の準備ができていた時期だったから、自分で感情をセーブすることができたんです。むしろこれからが大事だな……って思いながら、みんなの間を歩いていきました。

――嬉しさよりも、先を見据えていたんですね。立ち位置(3列目)のことは関係ありますか?

寺田 私は加入当初から「センターになりたい」と言わせてもらってきたんですけど……私、満足することは死ぬまでないだろうっていうスタンスで生きてるんです。なので、そういう点ではまだまだじゃないですか。立ち位置がどうこうっていうよりは、人生っていうスケールで考えたらあの表情になった、っていうことですね。今回の選抜入りはセンターまでの通過点だし、もっと言うと人生の一部でしかないんです。

――相変わらずスケールが大きいですね。呼ばれる予感はありましたか?

寺田 握手会でもファンの方から、「もう入ってもいいと思う」と言ってもらえるようになっていましたし、今までの私は自信がなかったけど、認めてもらえているんだっていう実感はありました。

――番組では、「ひとつひとつの行動で示していければ」とおっしゃっていました。

寺田 私は言葉選びが下手なんです。だから、行動で示していければいいなと思って。今までの行動を評価してもらった結果、今につながっていると思っているので。いろいろしゃべるよりは、行動を見てほしい……という意味を込めての発言ですね。

――前作ではアンダーのセンターで、今作は初選抜ですから、行動を評価してもらってのことだと思います。そういう空気は感じていませんでしたか?

寺田 私は鈍感だし、気にしないんです。何を言われても、「いや、私は私なので」っていう感じなので(笑)。だから、メンバーにもスタッフさんにも、「もっとポジティブになれ」って言われるんです。去年の誕生日はみんなからそう連絡が来て(笑)。「我が強いのはいいけど、もっとポジティブに」って。ネガティブなくせに我が強いんです。ネガティブだからこそ成立しているところもあるんですけど。コンサートのリハーサルでも常に斜め下を向いてて。カメラを見ることができなくて。

――カメラさんも困っちゃいますね。

寺田 リハーサルだと私は恥ずかしさが勝っちゃうんです。そうすると、スタッフさんに「どうなってるの?」って言われて(笑)。でも、本番ではスイッチが入るんですよ。自分でもよくわからないんですけど。

いろんなものが肩に乗っている

――昨年12月のアンダーライブ(@日本武道館)についてお聞きします。M1の『ブランコ』からビックリしたんですよ。

寺田 えっ?何かしましたっけ?

――オープニングから寺田さんの目つきが尋常じゃなかったんですよ!「なんだ、この鋭い目つきは」と思って。

寺田 そうでしたか?自分ではわからないです。いつも歌詞の意味を解釈して歌ってはいるんですけど、それがどう見えているのか、わからないので……。

――あの瞬間は、歌詞の意味を超えた目をしていましたね。

寺田 おぉ!

――座長として武道館公演を迎えるって、いろんなものを背負うわけじゃないですか。多くのものと戦っている人の眼力だったんですよ。そして、そういうものに負けないぜっていう目をしていました。

寺田 『ブランコ』という曲は、いろんなことを成し遂げていく過程で、いくつもの武器を身につけていくという歌詞なんですよ。それが私っぽいなと思って。だとしたら、軽い気持ちで歌えないし、歌詞の世界観に入りやすかったというのはありますね。あと、今回の武道館は選抜、アンダー、3期生に分かれての披露だったじゃないですか。ブログにも書きましたけど、人間って新しいものに目移りするものなので(笑)。いかに今まで自分たちが築き上げてきた泥臭いものでファンの方の目を引き寄せられるか……ということを考えていました。だから、肩にいろんなものが乗ってるぞという。

――乗ってましたよ!実際の身長より大きく見えましたもん。

寺田 最近、渡辺麻友さんにも言われました、「思ったより小さいんだね」って。写真や映像で実際より大きく見えるというのは、研究生時代から憧れていたことだったので、そういう言葉は嬉しいです。

――最終的に表現って目じゃないですか。怒りも悲しみも喜びも。

寺田 それはあります!「目は口ほどに物を言う」ですからね。

――乃木坂46のメンバーで同じことを感じたことがあって。中元日芽香さんがセンターだった時のアンダーライブで。

寺田 あー、なるほど!

――目でその時に言いたいことをすべて表現してしまうという。

寺田 うんうん。わかります。私、大島優子さんが好きだったんですけど、そういうことですよね?

――そうですね。AKB48グループでは断トツで彼女でしたね。目で世界観を作ってしまうというか。

寺田 でも、それは嬉しいですね。ありがとうございます!

――しかも、武道館のサイズでそれが伝わってくるなんてハンパじゃないですよ。

寺田 よく「遠いから見えないよ」なんて言われるんですけど、私はそんなこと考えたことないんです。全力でやっていれば、遠くても見えるものなんです。その思いが伝わったってことなんですかね。でも、アンダーのセンターになったから変わりましたということではないんです。研究生で端っこだった時代から、何も変わらないスタンスでやってきましたから。もちろん技術がついてきたというのはあるんでしょうけど。そうだ、見てほしいのは、一昨年の神宮球場なんですよ。実は、中継で一度も表情を抜かれなかったんです。でも、『別れ際、もっと好きになる』で一瞬、抜けに私が映るんです。その時の顔を探して見てください!ほんの一瞬しか映ってないんですけど、絶対に武道館と同じ目つきをしてますから!

――それは気がつきませんでした(笑)

寺田 それを自分で見て、私は何も変わってないんだなと思いましたもん。どこにいようとも、私はちゃんと伝えようとしてるんだなって。

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