モハメド・アリが私を支えてくれた

――武道館のことをもう少し聞かせてください。2日間の出来はいかがでしたか?

寺田 私自身も悔いなくできました。ファンの方も、「アンダーライブがよかった」って年が明けても言ってくださって。メンバーも「楽しかったね!」って。私のテーマとしては、座長の力ラーが強すぎるんじゃなくて、それぞれの力ラーが出るというのが理想だったので。みんなに楽しかったと感じてもらいたかったので、それが叶ったのが嬉しかったです。

――メンバーも満足度の高いものだった。

寺田 はい。「全員センター」の企画があって、みんなが輝ける場所がありましたけど、そこは自己責任じゃないですか。うまくできなくて悔しかったメンバーもいるかもしれないけど、一緒に取材をしていて、楽しかったという声が聞かれるので、よかったですね。

――先ほども軽く触れていましたが、選抜の公演と3期生の公演はどれくらい意識していましたか?

寺田 他のメンバーは「どうしよう?」って不安がっていました。選抜メンバーのライブは小道具を使う場面もあったし、3期生のお披露目は何をしても面白く観てもらえる。そんな中、アンダーライブって、自分の体を使ってひたすら踊るしかないんです。伊藤かりんちゃんにズバッと言われたんですけど、「蘭世が悪いっていうわけじゃないけど、他のものが面白すぎてアンダーライブと比べられちゃうのは、嫌なタイミングだよね」って。でも、私としては、「他が面白かったとして、だから何?」って思ってて(笑)。アンダーライブのいいところは、休む間もなく汗をかくところだし、私自身も熱血なところがあるから、アンダーライブのいいところを出せば、観ている方の心の奥に刺さると思っていました。

――刺さりました(笑)。パフォーマンスもよかったと思うんですけど、スピーチがまたよかったですよね。「ここでモハメド、アリの話を出すか!」と思って。

寺田 ああ、はい(笑)。父がボクシング好きで、その影響でテレビで試合を見ることがあって。それで興味を持って、いろいろと調べるようになったんです。昔の偉い人の名言を調べるのが好きなんですけど、いいなと思ったのが、アリさんの言葉なんです。

――武道館では、「あまりにも順調に勝ちすぎているボクサーは、実は弱い」という名言を意訳して引き合いに出しました。

寺田 その言葉を知って、「これだ!」と思ったんです。私がその言葉に支えられたんです。アイドルってそういうものじゃないですか。私たちが頑張っている姿を見て、ファンの方も頑張ろうと思うから成立しています。だから、私もそういう存在になれたらいいなっていう意味を込めました。

――何を話すかは決めていましたか?

寺田 感謝の気持ちを忘れないということと、アリさんの言葉を入れるくらいしか決めていなくて。

――フリースタイルだったんですね!

寺田 そもそも一字一句覚えられないし、その場の感情で話さないと……ロボットじゃないので、私たちは。誰かの指示通りに動いてたらアイドルじゃないと思う。

――アイドルだって人間だ、と。そのアリさんが武道館で試合をしたことがあるんですけど、知っていますか?

寺田 知ってます!

――アントニオ猪木さんと異種格闘技戦を武道館でやってから、去年が40周年だったんですよ。

寺田 それは……意識していなかった(笑)

――ですよね(笑)。聞いていて、勝手につながったんですよ。

寺田 フフフ。なんかいいですね。そうやってみなさんがいろいろと解釈してくれたり深読みしてくれたりするのが嬉しいですね。そうやって吸収してくださるのが私の理想形なので。

――そんな名言を引き合いに出しつつも、自分のことを「クズ」とも表現していて。

寺田 常にネガティブなので。メンバーを見ていると、みんなかわいいし、いいところがあるのがわかるじゃないですか。私は自分のいいところが見つけられなくて……。

――ご自身のセンターのことを「史上最弱」とも話していましたね。

寺田 それは薄々感じていたんです。握手会でのファンの方の言葉とか、センターに決まった時のスタジオの空気とかで。「こいつで大丈夫か?」って心配してたと思うんですよ。

――でも、全くそんなこと感じさせないステージでしたよ。アンダー2日目にもすごいことを話していましたね。「1+1=2って誰が決めたんだ」って。唐突すぎて、すぐ理解できなかったんですけど(笑)

寺田 そうですか?私としては一番シンプルな言葉を選んだんです。みんな、枠にはめようとするじゃないですか。私はそれが嫌いで。決まり切ったことの象徴が数学なんです。なんでもいいんですけど、「ABC」の順番って誰かが決めたからそうなってるけど、「BCAZ」の順番だっていいんですよ。誰かが本気を出せば、歴史は変わるんです。なんでもかんでも決めないでよっていう気持ちを伝えたくて、そういうフレーズを使いました。

――スケールが大きくて素晴らしいと思いますよ。さらに、初日には「この瞬間からアンダーの第2章を作りたい」とも発言しました。

寺田 私は武道館だけで終わらせるつもりでやってたんです。だから、2日目に言わないで、初日に言ったんです。(次作で選抜になることを)見据えて言ったというと嫌味かもしれないけど、なんとなくアンダーの第1章というものがあって、どこが区切りなんだろうと思っていたんです。自分たちで始めたことは自分たちで始末しなきゃいけないですから。

――でも、スピーチというのが新鮮でした。たとえば、一昨年の神宮で数人のメンバーが「乃木坂らしさ」について話す場面がありましたが、あれは書いてきたものを読み上げましたよね。

寺田 そうですね。でも、それも全然意識していませんでした。とにかく今までの思いをぶつけようと思って。一言でもいいから刺さる人がいればいいなと思って話しました。

――大事になってくるのは、選抜になったこれからだと思います。

寺田 スタンスは変わらないです。メンバーやスタッフさんに感謝する気持ちを忘れないことですね。それを忘れたら人間として終わりなので。その気持ちを持ち続ければ、内側から自然と出てくるじゃないですか。その態度を周りの方やフアンの方に感じ取ってもらえればいいですね。そこは見ていてほしいです。

――以前お話を聞いた時、「見返してやりたい」とおっしゃっていました。今でもその気持ちはありますか?

寺田 常に負けず嫌いだし、褒めて伸びるんじゃなくて、挑発されたほうがスイッチが入るタイプなので。

――誰が挑発するんですか(笑)

寺田 今はもうないですけど、コンサートのリハで怒られてばかりだったんですよ。右も左もわからない研究生時代だったのに、誰も助けてくれなくて。でも、心が折れるんじゃなくて、私は燃えたんですよ!面白いじゃんと思っちゃって!みんな泣いてて、私も涙は出ているんだけど、「面白い!」と思ったので。「覚えとけよー!」っていうのが私の原動力なのかな。最近だと、選抜の枠が増えたから入ったんだと思われるのが一番嫌で!「私の4年間の努力をなんだと思ってるんだ!」って思います(笑)

――完全に原動力ですね。でも、なんだかんだで変わっていないんですね。

寺田 それは動かない大目標があるからでしょうね。私はそこしか見てないから。

――富士山の山頂しか見てないから、五合目にいようが八合目にいようが、気持ちは変わらない。

寺田 そうですね。だから、人の意見にも左右されません(笑)