長い夏を締めくくったのは齋藤飛鳥の涙と沈黙だった。そして、そこに至るまでの新センターの不安と重圧の日々を、秋元真夏はずっと近くで見続けていた。アイドルとしてのスタンスも歩んできた道のりも違う二人は、なぜお互いを心から信頼し合えるのか。

沈黙の理由

――今日は神宮球場で公演で大団円を迎えた真夏の全国ツアー2016を振り返りつつ、ツアーを通じてぐっと距離が縮まったと思われるおふたりの関係性を掘り下げていけたらと思います。まずは全日程を終えての率直な感想から聞かせてもらえますか?

秋元 毎年全国ツアーをやらせていただいてるだけに、前の年と同じようなものじゃダメなんだっていう気持ちがメンバー間にすごくあって。そんななかで、やっぱりその時の最新シングルでセンターを努めてる子がツアー全体を背負うようなところがあると思うんです。特に今年はそれを強く実感していて、飛鳥がセンターとしてグループをまとめようとしているのを後ろから見ていて常に感じました。

齋藤 センターに選ばれた時、いちばんの不安要素が全国ツアーだったんです。毎年全国ツアーをやらせてもらっているけど、去年よりも上のものを届けたいというのは毎回みんな意識して取り組んでいて。そんなタイミングで私がセンターとしてツアーを回ることになって…うーん、すごく楽しかったんですけど、今までのツアーの中ではいちばんいろんなことを考えましたね。

――齋藤さんはツアー最終公演の最後、センターを務めた『裸足でSummer』が始まってすぐに感極まってましたね。

齋藤 私は普段あまり悩み事を相談しないタイプなんですよ。でも、地方公演の間は誰かに相談をしたくなるぐらいに色々な悩みを抱えながらやっていて。そんななかで地方公演が終わって私の役割も一区切りして、神宮球場の3日間はまた別物のバースデーライブだから不安やプレッシャーもそんなになかったんです。でも、『裸足でSummer』が始まる直前に私がセンターに立つまでの経緯をまとめた映像を流してもらって、もうその時点で申し訳ないやらありがたいやらでぐちゃぐちゃになってしまって。しかもステージに出て行ったら、今まで見てきた中でも一番っていうぐらいにファンの皆さんが一生懸命タオルを掲げてくれていて……私は幸せ者だなって思いました。地方公演ではネガティブな気持ちから流れてしまった涙が多かったけど、あのときはうれしい涙でしたね。

――曲が終わった後には、言葉に詰まるほどこみ上げてくるものがあったようで。

齋藤 今になって思い返してみると、涙で言葉が出ないってすごくかっこ悪いなって(笑)

秋元 そんなことないよ!飛鳥が泣いてるって分かった瞬間、みんな動揺して振り付けがぎくしゃくしちゃったんだから(笑)

齋藤 アハハハハ。でもしゃべらなくてよかったのかなって思ってます、逆に。

――たくさん言葉を重ねていくよりも雄弁な涙だったかもしれません。そんな齋藤さんの精神的な支えとして、もはや秋元さんの存在は欠かせないものになっていますよね。齋藤さんは仙台公演のMCで「真夏の優しさには本当に助けられています」と話していました。

齋藤 もともと私はネガティブだから不安やプレッシャーはずっと抱えた状態ではあったんですけど、でも誰かに言う程ではなかったし、言うのもダサいから自分の中に留めていたんです。ただ一度だけどうしても我慢できなくなっちゃった時があって。何かの収録の後にひとりで泣いていたんですね。そうしたら真夏が寄ってきてくれて励ましてくれて。そのあとにちょっと時間があったから真夏とマネージャーさんと3人で軽くご飯に行って、そこでいろいろと吐き出して聞いてもらってすっきりできたんです。前から真夏は誰にでも優しいし、私がセンターに決まった時からもずっと優しい言葉をかけ続けてくれていたんですけど、そこで話を聞いてもらったときに「あ、真夏には言えるな」と思って。それから真夏にだけ話したりとか、言わなくても何かあったら目が合ったりとか(笑)

秋元 私も基本的に悩みを人に話すタイプではないんですよ。性格的に飛鳥とタイプが似ているかというと違うと思うんですけど、根本の部分では近いものを感じていて。もし飛鳥が一人で抱え込んでいたとしたらこれは相当つらいだろうなって思っていたから、もし私なんかでも話して楽になるのなら聞いてあげたいな、ぐらいの気持ちだったんですけどね。本当に私はお節介すぎるから(笑)

――よく自分の直したいところとして挙げていますよね。

秋元 さじ加減を気をつけないと「このひと、めっちゃウザい」ってことになってしまうので……ただ、飛鳥にならウザいって思われてもまあいいかなって。さっき話していた収録のあとで飛鳥が楽屋で泣いちゃった時って、完全に爆発したような感じだったんですよ。

齋藤 フフフフ。

秋元 たぶん、溜まっていたものがはち切れてしまったと思うんです。あのときの飛鳥を見てからは、自分がどう思われてもいいからとりあえず飛鳥の近くにいてあげたいなって。

――秋元さんはツアーが終わった直後のブログで一番最初に齋藤さんとの2ショット写真をあげて、彼女について「頑張り屋さんの踏ん張り屋さん」と書いていましたね。

秋元 やっぱりツアー中はなにかと飛鳥がしゃべってまとめることが多くて、それを毎公演ずっとやらなくちゃいけないんですよ。飛鳥はセンターに選ばれて間もないときに「自分は積極的にしゃべるタイプじゃないからすごく不安がある」って話してましたけど、それを特に誰に相談するわけでもなく、自分で解決して逃げずにちゃんと応えていたのは立派でしたね。センターになったことで成長した度合いでいくと、歴代でも1位なんじゃないかって思うぐらい。

――このツアーを経て、お互いの人物像に変化はありましたか?

齋藤 なんだろう……でも真夏は本当にずっと優しいんですよね。誰に対しても接し方を変えなくて、そこが私の大好きなところで。ツアー期間中もメンバーの中で1〜2番ぐらいに頼ってたと思います。もとから真夏のことは大好きだったんですけど、たぶんどこかで胡散臭さを感じていたんですよ(笑)

秋元 フフフフ。

齋藤 でも、今回のツアーでそれは消えました。本当にいい人なんだなって(笑)

秋元 いやいや、ありがとうございます。偽善者みたいなイメージが消えてよかったですよ(笑)

齋藤 真夏と似てるところも結構あるんですけど……でも、なんか私が持ってないものをすべて持ってる印象があって。真夏は頭がいいし、やってることに無駄がないし。なにをやらせても恥ずかしいことにならないのもかっこいいですよね。あとはもう人間力。真夏だからこそ、こういうキャラでいれるというのはあると思います。私は誰からも好かれたいとは思ってないんですけど、でも真夏みたいにこれだけ周りから愛されている人を見ると、そういう人生もアリなのかなってすごい思います。

――秋元さんはいかがですか?

秋元 飛鳥とは前からぜんぜんしゃべってはいたんですけど、確かに今回センターに選ばれてから距離が近づいた感じはありますね。そもそも、飛鳥は1期生最年少メンバーだけど責任感が強くて芯もある子なんです。

――そうですね。

秋元 だから小顔だとか見た目でもてはやされることが多いけど、ちゃんと中身を知ってほしい!小顔もすごく大事だけども!

齋藤 小顔、大事だよ?(笑)

秋元 でも中身が!顔から入っても全然構わないから、ちゃんと中身まで辿り着いてくれ!

齋藤 アハハハ。

秋元 ホント、みんなに飛鳥のトリセツを作ってあげたいぐらい。

――さすが、「必要以上にお節介すぎる」ことを自認する秋元さんですね。

齋藤 でも、真夏は自分からいろいろと動くからお節介って言ってるんだと思うんですけど、傍からすると全然お節介な感じはしなくて。別に押し付けもしないし、逆にいい距離感だと思います。話しやすくする空気を作ってくれるのが上手なんですよね。そう、上手なお節介。

秋元 エヘヘヘ(照笑)

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