アイドルなのに明るく振る舞えず、女子なのにみんなの中に溶け込めない。齋藤飛鳥は飛べない天使のような存在で、「不器用」というよりも「不適合」という言葉がしっくりくる。そんな彼女はいまの自分とどう向き合っているのだろう。偽らざる言葉に耳を傾けてみよう。

弱っちい人間だから期待は持たないで生きる

――最初にどうしても聞いておきたいことがあるんです。夏に撮影させて頂いた時に齋藤さんが残した言葉が、あまりにも衝撃的で。

齋藤 なんか言いましたっけ?(笑)

――「夏の好きなところ」というテーマでいろいろと話を聞いていたんですけど、齋藤さんはあまり夏という季節が好きではないらしく、夏に対してほとんど好意的な意見がなくて(笑)。そこで最後に「夏の空にかかる虹はきれいですよね。虹は好きですか?」と聞いたら、「虹は過大評価されすぎだと思う」と、一刀両断したんです。

齋藤 あー、覚えてます(笑)

――あらためて、その言葉の真意を教えてください。

齋藤 単純に「あー、虹だ。きれいだな」と思ったことはありますし、一つの自然現象として不思議だなって気持ちはあるんだけど、虹がかかったからってみんながこぞって写真を撮り出すのが……。

――理解できない?

齋藤 ちょっと評価されすぎじゃないかなって。それに雨がかわいそう。

――雨が降ったから虹がかかっているのに、雨は評価されず、虹だけに過剰に反応する群衆に違和感を覚えるわけですね。

齋藤 まあ、そういうことですね。

――齋藤さんって世間への諦念のようなものがある人だなって以前から思っていたんですけど、それだけじゃなくて本質を見極めようとする優しさが強い人なんじゃないかなって、今の話を聞いて思いました。

齋藤 どうなんだろう? でも、もちろん諦めはあると思います。あると思うし、むしろそう思うようにしている部分もあるっちゃありますけど、たしかに本質を見たいというか、そういう気持ちも持っていますね。

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――なぜ、諦めの気持ちを持っているんですか?

齋藤 なんでですかね? 大きなきっかけがあったわけではないんですけど。自然と何に対しても、期待をせずに生きていくっていう生き方が自分の中で一番合ってて。だから諦めっていうか、期待を持たないで生きてます。

――それは自分を守るためのーつの策?

齋藤 それが大きいんだと思います。私がすごい弱っちい人間なので、期待を裏切られてショックを受けるのが怖いんです。

――でも、そんな齋藤さんが、今はすごく大きな期待をかけられている状況じゃないですか。他者から自分に対する期待っていうのは、どう受け止めていますか?

齋藤 すごいありがたいけど、みんなただ言ってるだけかな?って気持ちでいます(笑)

――それはあえてそういう風に受け取るようにしている?それとも本気でそう思っているんですか?

齋藤 んー、最初はあえてそう思うにしてました。でも、今は本当に思ってます。

――自分も虹と一緒で過大評価されている?

齋藤 そう思いますね。

――本当は雨と変わらないのに……。

齋藤 変わらないです。

――どこが一番、世間から自分が過大評されている部分だと思いますか?

齋藤 そもそも今の自分の立ち位置だったりっていうのも、本来の実力と合ってないなって思います。次世代とかって言っていただいても、まぁ若いから言ってるだけだよなっていう気持ちと、ありがたいなって気持ちの両方があるんです。

――「そんな評価しないでくれよ」って言って、何も頑張らない人も中にはいると思うんですけど、その評価に追いつけるように努力をされていますよね。齋藤さんのすごいところはそこだと思うんです。

齋藤 一応はしてますね(笑)。

――一応どころかかなり努力されていると思いますよ!齋藤さんは「乃木坂46である自分を受け入れられない」という話をされていましたけど、なんで受け入れられないんですかね……。

齋藤 受け入れられないというか、「認めてやんねーぞ」みたいな感じです。乃木坂46って名前を、今いろんな方に知っていただいていて、私はその名前を使って生きてるくらいの気持ちなので。自分に対して価値があるとは全く思ってないんです。

――でも、仮に齋藤飛鳥というアイドルが価値のないものだとしても、乃木坂46には価値がありますよね。

齋藤 それはあると思います。

――そんな価値あるグループのセンターを、この夏に務めていたのは齋藤さんですよね。ご自身の存在が乃木坂46が評価されているーつの要因になっているとは思わないんですか?

齋藤 全然思わないですね。

――どこまでも自分をなかなか認めてあげない(笑)。以前、白石(麻衣)さん、生駒(里奈)さん、橋本(奈々未)さんとまだ差があるのを感じると話していましたが、それってまだ感じたりします?

齋藤 前までは自分との差がありすぎて、違うグループの人くらいの気持ちでいたんですよ。でも、今はだいぶ一緒にお仕事をする機会が増えたし。アドバイスをもらったり、逆にアドバイスをしてあげることもあったりして。全然まだ追いついてないとは思いますけど、段々と背中が見えてきてる気はします。

――白石さんたちにそこまで近づけたからこそ、センターに選ばれたのかもしれないですね。

齋藤 いや、センターになったのは「本当は嫌だけど、仕方ないからこいつにするか!」っていう、妥協に妥協を重ねた結果だと思っています(笑)

――それは絶対にないですよ!(笑)

齋藤 でも、だからこそセンターに対して必死に取り組めたんだと思います。もっと出来たよなって思う時もあるし、次にまたチャンスがあるとも思っていないから、ひたすらこの期問に学んだことを、今の場所で活かさないとなって思っていますね。

――自分のことを認められないからこそ、期待に応えようと努力したし、実力をつけようとして頑張れたってことですね。そう思うと、齋藤さんの自分をなかなか認めようとしない考え方も、ひとつの正解のような気がしてきました。

いわゆる女子は嫌いだけど可愛いとは思う

――齋藤さんの自己評価が異常に低い理由に、自分の理想とするアイドル像と自分の実像があまりにもかけ離れているからという原因があるような気がしています。どれだけ人気が出ても、理想像と程遠いところにいるから、なかなか満足できないというか。

齋藤 それもあると思います。理想のアイドルは自分と逆ですね。だって暗いアイドルって意味分からないじゃないですか。

――ハハハ! 齋藤さんが暗い人だとは思わないですけど、人を楽しませるのがアイドルだから、明るい方がわかりやすいっていうのはありますよね。

齋藤 絶対に明るい方が良いですよ。でも、自分は逆だなぁと思って(笑)。そこに関しては、もう諦めてますね。デビューから3年くらい「THEアイドル」みたいな風になろうと思って、そこでいろんな痛い目を見たし、恥ずかしい思いをしたっていうのもあるし。自分はその役割じゃないかなっていうのも気づきました。

――齋藤さんはアイドル不適合者?

齋藤 そうですね。今も全然、自分のことをアイドルだと思っていないので。

――要はアイドルに向いてない人間が、乃木坂46という人気アイドルグループにいるっていう矛盾みたいなことを、常に感じているってことですか?

齋藤 そうですね。辛い状況(笑)

――でも、齋藤飛鳥という人間が、もはやひとつのアイドル像として受け入れられてるからこそ、ファンがこれだけいるんだと思いますけどね。

齋藤 世の中が優しいからちょっと受け入れてもらってるだけです。

――橋本さんもどちらかと言えば、アイドルらしくないアイドルだと思うんです。齋藤さんは、「そういう奈々未がアイドルをやってるってところにアイドルの面白さがあると思う」と以前おっしゃってたんですけど、自分に対してはそうは思えないですか?

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