アイドル界随一の”マニアック趣味”を持ったメンバーが揃う乃木坂46のメンバーに月替わりで、その深淵なる世界をこってりと語ってもらってきたこの連載。最終回は、若月佑美がデサインについて語り尽くします。

絵を見たいという人が求めているものは

絵を描くこととの出会いは、幼稚園から小学校低学年ごろまで通っていた絵画教室。水彩色鉛筆を使って描いていました。それから、しばらく絵からは離れていましたが、中学3年生の頃、周りにアニメが好きで絵も上手な子が多かったので、その影響からパソコンで絵を描くようになったんです。だけど、人物を描くことが得意じゃないと気づきました。アニメを観ていても背景に目が行ってしまうこともあったりして、絵に対する意識が変化しました。そして、高校では美術部を選択したんです。

当時、親が美術館によく行っていて、ついていくことが多かったんです。モネやシャガール、ゴヤ……様々な画家の作品を観ていく中で、抽象絵画に魅カを感じるようになりました。

たとえば題名は「りんご」なのに、パッと見はそう見えなくて、でもりんごのどこかを切り取って描いてるような絵に意味性を見つける……というような。

こだわりというわけじゃないんですけど、私の作品ってハッピーじゃないんですよ。絵や歌で表現することで、ハッピーじゃないことも肯定的に見えると思うんです。それに、絵を見たい人は必ずしも「楽しさ」を求めているんじゃなくて、「落ち着きたい」とか「何かを得たい」という目的なことが多いと思うんです。まぁ、私の性格的にもダークなトーンを求めてしまうところはあるんですけど(笑)。

去年3月に乃木坂力フェで販売されたTシャツやトートバッグなどのデザインをやらせていただきました。普段から絵やデザインを描いてはいるけど、その時間を誰かのために使いたいという思いがあったので、嬉しかったですし、学ぶことも多かったですね。商品としての完成を考えると自己満足だけじゃダメだし、使えない色や素材だってある。ただ、譲れないこともあるので意味を込めてデザインした部分に関しては説明させていただきました。そんな調整も私には楽しかったです。

トートバッグのバーコードに見えるデザインは、ライブリハの合い問に落書きしたアイデアが膨らんで形になりました。あのトートバッグを普段からマネージャーさんが使ってくれるのはうれしかったですね。またグッズに関わることができたらいいなと思ってます。

新しいことを知るたび「私もやらなきゃ」って

現在連載させていただいてる「Mac Fan」では、デザイナーさんに話を聞いたり、アドビシステムズを訪問したり、オリジナルフォントを作成したり、ひとつひとつの経験が糧になってます。なかでも印象的だったのはカリカチュア(誇張似顔絵)アーティスト田中徹さん。人の顔を描くのが苦手だったんですけど、iPad Proを使った特徴を捉えて描く方法を教わりました。

連載を始めてから創作意欲が高まり、より絵を描くようになりました。新しいことを知るたびに「私もやらなきゃ」と思えるんです。それと、同じような衝動に駆られるもの……それが舞台です。

9~10月に主演させていただいた「嫌われ松子の一生」は、舞台セットの綴密さに目を奪われて、思わず写真を撮りまくったんです。セットの脇にたくさん小道具がおいてあって、ストーリーの中で実際に使う小道具と使わない小道具が混在しているんです。でも、すべてが昭和にちなんだもので、お客さんが席についた瞬問から昭和の世界に入り込めるよう作られていました。

太宰治のような小説が書けない物書きが苦心して執筆している原稿用紙も、よく読むと本当に途中まで小説が書いてある。ステージが十字架の形をしていることが、物語のキーになる「キリスト教」や松子が背負う「十字架」といった意味を持っていたんです。ここでも、”デザインの深み”というものに触れることができました。